現代のお墓事情の変化に即したお墓を考える

 現代のお墓事情をルポする番組で、「お墓仕舞」が頻繁に取り上げられるようになりました。故郷にあるご先祖や親のお墓、・・・このお墓のあることが、現代人の心の負担になってきたと言うのです。せっかくお父様やご先祖が建てられたお墓を取り壊し、両親やご先祖のご遺骨を合祀墓に改葬し、霊園やお寺に墓地を返したいと考える人が増えています。一年に一度でもご両親やご先祖の故郷を訪ね、お墓参りをしさえすれば、たとえその時だけでもご両親やご先祖の霊に手を合わせることはとても良いことだと私は考えて来ました。仮にご先祖の霊魂がお墓におられると信じない人でも、真心を込めてお墓をお参りすることが、ご先祖様への感謝の心を持つ証なのだと考えていただけるのではないでしょうか。


 最近、所得と資産の世代間格差が問題視され始めました。このことも現代のお墓事情に大きく影響しています。今の若い世代は、お墓が買える蓄えが無い人が多いのが現実です。仮に蓄えが少なく、保険にも入ってなければ、いかに親孝行で、どんなに親の為に立派なお墓を建てようと思っても、供給が需要に追いつかない墓地が高額なのに加え、最近では中国人の人件費も高騰し、墓石も値を中国も上げてきていますので、お墓を新しく購入するのはかなり厳しい話になります。お墓の大きさが親やご先祖への感謝の表現などとは言っておられない世の中になりました。ですから最近ではお墓の見学者様も、先ずは永代供養墓から見せてくれ、と胸張って言われるようになりました。昔は見学の最後に参考にしたいから少し見せてくれと言われたものでしたが。


 もう一つの現代日本の特徴は、地方から首都圏への移住の傾向がなかなか止まらないことです。せっかく生まれ育った故郷にお墓を買っていても、会社の仕事の都合で家族揃って関東へ移住しなければならないことになる人が多いです。私が経営する霊園でも結構こういうケースは多いです。墓地をそのまま置いてあった方や、まだ誰もお墓に埋葬されていない場合は、お墓を霊園に返却して来られる場合が多いです。しかし墓石代は返金されないどころか、撤去費用を求められるし、墓地代も、私共の霊園の定めでは、購入して7年が経過するば購入額の3割しか戻りません。それどころか墓地代も解約しても戻らない霊園が殆どです。


 そこで私はどうしてもお客様に購入していただかなければならないお墓の部分(文字彫する竿石等)と霊園がお客様に貸しても良いお墓の部分(墓地と納骨する基台部分)とに分けて、お客様がお墓を使用する期間だけ会費の様なものを支払うだけのお墓の販売システムを考えてみました。入会金は35万円、月々の会費が12,800円。10年間会費を滞りなく払っていただくとそのお墓はお客様のものになりますが、何時解約されても残債の請求はない、・・・また解約時にはお客様が希望すれば遺骨は無料で合葬永代供養墓に改葬できる、という条件付きで、私の第二霊園、美原東ロイヤルメモリアルパーク(羽曳野市埴生野)の第三期拡張墓地の墓地使用者募集に合わせ、正に全国に先駆け、新時代の企画のお墓を発売いたしました。


このような新しい企画は、20年前関西で初めて当社が売り出したガーデニング墓地のように人気を博するには時間がかかるだろうし、お客様が直ぐに飛びつかれるものでないことは覚悟の上でありました。しかも霊園に代わって営業される石材店様から35万円の入会金については、少しハードルが高いと言われておりました。契約金を35万円にしたのは、正直申し上げて、他のお客様には又貸しできない竿石、花立、水鉢、墓標などの仕入代と文字彫費用、そして石材店様への顧客紹介料などを回収しておきたかったからでした。しかし結果、4ヶ月が経過するも契約はさほど伸びておりません。石材店が言うように入会金については再検討し、販売システムの修正が喫緊の課題となりました。ただ将来には普及するお墓の姿だと私は信じているのです。