マンションへの引越

  

 二人娘がここ数年で嫁ぎましたので、二世帯が棲めるようにと35年前に父が建てた自宅に住み続けることは、今では老齢にならんとする私と妻と、一人では何事も出来なくなった母の3名には広すぎて、維持することすら負担に感じるようになり、老後の年金生活のことやら、又生活に使うエネルギーも3人暮らしに相応しく節約すべきでしょうし、この辺りで自分たちの周囲にある様々な荷物を整理して身軽にならなければ、これ以上歳を取って身体が言うことを聞かなくなれば周囲の人々に迷惑をかけるだろうとか、いろいろ考えた末に、下の娘が嫁に行くことに決まった時、そろそろマンション暮らしに変える潮時だと思い立ちました。

 それからしばらくしてあやめ池遊園地跡地の「あやめ上池」の畔に近鉄不動産がマンションを建てる計画を発表しました。マンションの敷地は昔遊園地の中で最新式の何度も宙返りをするジェットコースターがあったところです。隣には結婚式場もできました。そこは動物園があったところです。私たち夫婦は休みに電車で奈良公園に出かけては公園の木立の中を半日ばかり歩き回るのを楽しみにして参りました。ですから住み慣れた町から遠く離れるのは淋しく、近鉄奈良線菖蒲池駅北口から徒歩数分の距離なら文句がありませんので、マンションの入居者募集が始まると同時に申し込みました。

 マンションの建物自体は特段豪華なものではなく、ごく普通のマンションですが、自分が棲むところはいかに狭くとも、気ままに自然を楽しめる自分の庭など無くとも、マンションの周辺が自然環境に恵まれていることが私のお気に入りです。元々池の端に木々が植わっていたところに、更に近鉄不動産が植樹をして、あやめ上池を一周できる遊歩道まで造ってくれましたので、少し朝早く起きて四季の移り変わりを楽しみながら散歩できるのが楽しみです。画像は引越して初めての休日の水曜日の朝に、この遊歩道から撮ったものです。山桜は散ってしまいましたが、八重桜は満開でした。高木のメタセコイヤにも若葉がふいて来ています。

 転居の準備は随分長く時間を取ってきました。私の大切な書物は、私の職場の執務室を改造し、室内の壁や窓の前を殆ど書棚にして、自宅から殆ど職場の私の執務室内に運び入れました。物置スペースがないマンションには、これまで使っていた家具類、道具類の殆どを持って行けません。だから自宅の中にあったもの、その殆どをゴミとして捨て去らなければなりませんでした。その一つ一つには懐かしい思い出が詰まっているのですけれども、思い出は心の中に残すことにして、総てゴミとして捨てることにしました。その量は言いますと、今もまだ少し捨てるものが家の中に残っていますが、2トントラックで最終的に8台にはなりそうです。