季節・季節の奈良公園を散策します  ― 夏 編 ―

奈良公園の夏を楽しむものと言えば、先ずは盆前10日間、毎夜行われる燈花会(とうかえ)でしょうか。一夜だけではなく10日間も市民や観光客の目を楽しませてくれる万燈を、奈良公園のあちらこちらに並べて、点灯するのに多数のボランテイアの方々が働いて下さっています。また7月1日から公園内にある寺社は夜間照明が照らされ、夏の夜空に天平の伽藍の雄姿を浮かび上がらせています。そして8月15日夜、春日大社の万燈に火が点され、高円山には大文字の篝火が点り、奈良公園の夏はクライマックスを迎えます。

木陰の下でお茶をしたければ、喫茶「たかばたけ茶論」がお薦めです。また暑い日差しの中での一時的な待避場所のお薦めは、国立博物館前の地下休憩所です。あそこは冷房が効いていて喫茶店もありますし、他にはない文化的なおみやげ物を探すこともできます。入り口が分かりづらく、為にどっと混まないことがまた良いですね。因みに入り口は博物館前の池の端を降りていくか、一旦博物館に入館して、展示場には入らず、右の階段を降りたらいいのですが。夏は夜間の奈良公園の散策がお薦めですが、公園内の隅々まで照明されている訳ではありませんので、道を熟知した人でないと難しいかもしれません。暑い昼の日中を散策するのは、想像しただけでも汗が噴き出て来ますが、実際に木陰の下を、微風を頬に受け地道の上を歩いてみると想像するほど暑くないものです。太陽の熱を歩く人々に反射するアスファルトの道と、太陽の熱を地下に吸収してくれる土の道とは、こんなにも暑さが違うのかと驚いてしまいます。木陰の下を歩くのなら、春日大社の杜の中の禰宜の道がお薦めです。耳を澄ませると足下に流れる微かなせせらぎが聞こえ、一服の涼味になるでしょう。

奈良公園で涼しいおやつと言えば、昔ながらの「かき氷」と「わらびもち」ですね。最近の「○○フラッペ」などというのも良いかもしれませんが、かき氷の「イチゴ」「メロン」「宇治」「ミゾレ」と言った昔ながらのスタイルを残していただけるのはとてもありがたいことです。「わらびもち」を茶店の縁台でいただくのは風情がありますが、料亭でいただくというのも良いかと。そういう体験をしたい方には興福寺東側にある柳茶屋さんがお薦めです。和室に座り、抹茶を一緒にいただいてお一人たったの750円です。

なら町にはお昼ご飯をいただける店は多数ありますが、はり新さんの「かみつみち弁当」は有名ですから、わざわざご紹介には及ばないでしょうが、京都のオ・モ・ヤさんが、なら町に出店しています。坪庭が見える町屋の座敷で、フランス料理をいただくものまた楽しい体験かと思うのですが。

次は季節を秋に変えてまたこの散策コースの知られざる魅力について書かせていただきたいと思います。

(平成18年8月10日)